老いる意味 森村 誠一
88歳になられる森村氏の新書。
気になるタイトルだったので精文館で購入。
私自身57歳になり、視覚聴覚の感覚の違和感など、最近自分の身体がままならないことを感じることが多くなり、老いたと感じるようになった。
だが、まだまだやれるという気持ちもあり、心と体の折り合いがつかない中で、「老い」についてどの様に受け止めるべきかを考えていた。
「老い」はある日突然やって来るわけではない。
でも本格的な「老い」がもう目の前に訪れるのだろうと予感しつつ、漠然と不安だけを抱いていた。
そんな時に本書に出会い驚かされた。
森村氏が80歳を過ぎて老人性うつ病と認知症になり、3年ほど闘病していたと知ったからだ。
森村氏といえば「人間の証明」「野性の証明」とかが映画化もされ印象深いが、作家にとって、言葉を紡ぐことができなくなることは本当に苦しかったはずだ。
そんな辛い時期が生々しく綴られていた。
80歳過ぎてからの老人性鬱や認知症に打ち勝ち、仕事を現在も行う森村氏の生きる気概に、本書を読み進める中で触れることが出来、勇気を貰うことができた。
高齢化社会、人生100年時代に突入
厚生労働省のHPには、「人生100年時代」についてこんなことが書かれている。
ある海外の研究では、2007年に日本で生まれた子供の半数が107歳より長く生きると推計されており、日本は健康寿命が世界一の長寿社会を迎えています。
正直驚かされた。
また2050年までに、日本の100才以上人口は2050年には68万人になると予測されるデーターもある。
少し前までは、既に見送った実の祖父母同様、80代ぐらいが寿命なんだろうなと漠然と思っていた。
もしそうなら、残りの人生あと25年余り。
自分の人生、そろそろ終末に近づいてきたんだな。そんな風にぼんやりと考えていた。
しかし、現実は違う。
現役とほぼ同じくらいの長さの余生を生きる時代に突入した今、人生の先輩達から「老い」に対する知識や概念、そして「経験」を学ぶことが必要になってきているのではないだろうか?
本書を読み進めていくうちに、共感できる部分や印象的な文章が多々あり、知らず知らずマーカーで線を引いていた。
印象深かった文章を自身の備忘録として書いておきます。
問われるのは「 過去を見るか、未来を見るか」である。現在の自分が最も若いのか、最も年老いてるのかが分かれる。
過去に目を向ければ、 今の自分が一番年老いているのが、未来に目を向ければ、今の自分が一番若いのである。全く年齢には関係ない。
最先端は「 現在」という時間であり、そこには常に 最も新しい自分がいる。
身体が老いたり、病を経験しても、 心を含めた全てが老いてしまうわけではない。
病で仕事ができなくなるような時期も含めて、 人生には休息があっていい。
仕事の定年と人生の定年は違うものである。
友がいなくなるということは、自分の存在が薄れていくことである。
老いていくというのは、 孤独になっていくことである。
本書は、これから本格的な「老い」を経験するであろう50代後半の私にとって「老い」を学ぶ上での良い教科書となりました。
何度も、何度も読み返しつつ、今後の生き方を模索していきたいと思います。
常に未来を見つめられていれば、若者と同じ志、若者に負けない志を持つことができる。
精神的にも肉体的にも若さを保っていける。
森村誠一
守田 智司
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