朝の光に映える歩みと鐘と父

 

 

今朝も闇に足を踏み出し、朝焼けをのぞく。

 

吐く息は白く、手袋をしたまま上着のポケットにしまい、かじかむ手を温める。

 

日々、歩み続けることで四季のうつろいを感じることができる。

 

同じ時を歩んでも、春夏秋冬、それぞれに空の表情が変わってくる。

 

歩みながら、8月に逝去した父を思い出す。

 

享年92歳。年齢には不足はないが、その代わりに思い出は長く、

 

父が逝ってしまった気がまだ抜けない。

 

私をこの世に生かしてくれた父の死は、心身の礎を失った虚しさとなり、

 

なお埋めることができていない気がする。

 

今、やっと父との大切な思い出は、

 

灰とならずに残ると感じられるようになってきた。

 

 

 

「わたしたちは、何も持たずに世に生まれ、世を去るときは何も持って行くことができないからです。」

新約聖書 テモテへの手紙 第6章7節

 

 

父の生を送る最後の10日間、

 

父の命尽きる10日間、

 

彼のいる病室を訪れるたびに、

 

父の在りし姿に触れるたびに、

 

やせ衰えゆく腕を撫でるたびに、

 

まるで父の口から語りかけられるかのような気がした。

 

「物質の富や所有物は、つかの間の喜びであり、人生の真の意味には繋がらぬことを教えよう。所有物に執着せず、物事に程よい距離を置くことこそが大切。物にこだわりすぎれば、持たざることへの不安や不満が芽生えるもの。心の豊かさこそが、真に大切なのだ。人間関係と精神の充実こそが、長く価値あるものなのだ。」

 

 

そんな父の言葉を思い巡らせる頃、

 

東の空は淡い光を湛え、

 

朝日が静かな鐘を照らし始めた。

 

今年も残すところあと二日。

 

与えられた生に感謝し、今日もその日を大切に生きていこうと思う。

 

 

 

 

 

 

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守田 智司

愛知県蒲郡市にあるハイブリット学習塾/未来義塾の塾長。10代で愛知県から大阪、東京まで自転車で走破!大学中は、バックパック1つで、アメリカ1周。卒業後、アメリカ・アトランタにて「大工」を経験。帰国後15年間、大手進学塾の教室長・ブロック長として教壇に立ち、2005年独立。 大型自動二輪、小型船舶2級免許所得。釣り、ウォーキングが好き!作家は、重松清さん、音楽は、さだまさしさんが好き。「質より量より更新頻度」毎日ブログを更新しています。