平均点はどこへ消えた?ふたこぶラクダ型分布が語る学ぶ習慣を失った世代
最近の子どもたちを見ていて、つくづく感じるのは、家庭学習をしない子が増えたということです。もう35年間も塾の先生をやってきましたが、ここまで明らかに学ぶ姿勢に差が出ている世代は初めてだなと思います。
今の小学生や中学生は、いわゆる「Z世代後半」や「α世代(アルファ世代)」と言われる世代に属しています。Z世代後半というのは1997年から2012年ごろに生まれた子たちで、主に現在の中学生や高校生。一方で、α世代は2013年以降生まれで、今の小学生たちがその中心です。
この世代は、スマートフォンやインターネットと共に育った「スマホネイティブ」であり、「デジタル世代」とも呼ばれる子どもたちです。
学ぶ意欲の変化
正直言って、この世代の子どもたちは、1世代前の子たちに比べると、学ぶことへの貪欲さが薄れているように感じます。もちろん、一部にはデジタル技術を上手に活用して、自分から進んで学ぶ子もいます。学びを楽しんで、SNSや動画、アプリを活用している様子を見ると、本当に感心します。
しかし、その反面、ゲームやSNSなど瞬時に楽しいことへリーチできる環境に慣れてしまったせいで、学ぶこと自体が面倒に感じられている子も多いようです。ボタン一つで楽しさが手に入る時代の中で、「勉強する」「考える」といった行為は、どうしても退屈に映ってしまうのかもしれません。
学力差が広がる現実
最近のテスト結果や学力調査を見ていて感じるのが、学力差の広がりです。昔のテスト結果は、平均点付近に多くの子どもが集中する「山形の分布」でした。しかし今は、「ふたこぶラクダ型分布」と言われる、高得点層と低得点層に二極化した状態が顕著です。
具体的に、2023年度の全国学力テストでは、小学校6年生の国語Aの平均点が65点であった一方で、得点分布を見ると、80点以上を取る上位層が約15%いる一方、50点未満の生徒が約30%を占めていました。特に低得点層が全体の3分の1を占める状況は、かつての平均点集中型の分布とは大きく異なっています。
このような分布の変化は、コロナ禍の影響が大きいと言えるでしょう。例えば、文部科学省の調査によると、2021年の緊急事態宣言中、1日の家庭学習時間が1時間未満だった生徒は全体の45%に達しました。その結果、学習習慣が身につかないまま進級してしまった子どもたちが多く、これが学力の二極化を助長する要因となっています。
少子高齢化の影響
現在、日本の人口は約1億2000万人ですが、2050年には総人口が1億人を切り、約9,515万人まで減少すると予想されています。つまり、今から約3,300万人、現在の約25%が消えてしまうという計算です。さらに高齢者は1,200万人増える一方で、生産年齢人口は3,500万人も減少します。
その結果、高齢化率は現在の約20%から40%に跳ね上がると見込まれています。特に地方ではこの変化がさらに顕著になり、社会全体のバランスが大きく崩れることが予想されます。
この現実がもたらす影響は計り知れません。労働力不足や市場縮小に直面し、新しい市場を求めて国外へ進出する必要性がさらに高まるでしょう。
しかし、そんな未来を迎える日本の子どもたちが、果たしてその環境に適応できるのかという不安が募ります。今の子どもたちは、学ぶ習慣を失いつつあり、競争社会での立ち位置を確保する力を備えていないように思えるのです。
世界と戦うために必要なもの
私が訪れたマレーシアの大学では、自由に英語を操り、議論を交わす学生たちと出会いました。その姿を見て、「日本の子どもたちは、こんな高度経済成長を目指すエネルギッシュな人々と共存できるのだろうか」と強い不安を感じました。
競争が激しい社会では、学び続ける意欲と新しいものを生み出そうとする精神が必要です。しかし、今の日本では、家庭での学習時間が減り、学びへの意欲が低下している現状があります。このままでは、日本の子どもたちがグローバル社会の中で取り残されてしまうのではないかという危機感を抱かざるを得ません。
学ぶ習慣を取り戻す
だからこそ、今やらなければならないのは、子どもたちに学ぶ習慣を取り戻させることです。家庭での学びを支え、学校や塾での指導を通じて、学ぶことの楽しさを伝える必要があります。また、学びを単なる義務ではなく、未来を切り拓く力だと理解させることが重要です。
私たち教育者も、ただ学力を伸ばすことに注力するのではなく、子どもたちの学びの意欲を引き出す環境作りを心がけるべきだと強く思います。日本の未来を担う子どもたちが、世界と対等に渡り合える力を持つために、今すぐ行動を起こす時です。
最後に
塾長として、35年間教育の現場に携わり、多くの子どもたちと向き合ってきました。これからも日本の子どもたちの未来を支えるため、そして彼らが安心して成長できる環境を作るために全力で取り組みます。
次回も、子どもたちの未来をどう支えていくかについて新しいアイデアをお伝えしたいと思います。それでは、またお会いしましょう!
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守田 智司
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