シングリッシュ【塾長シンガポール日記➂】
今回、久しぶりの海外訪問。
日本にいる奥さんと毎晩、LINEでその日の報告をしているのだが、彼女から「久々の海外旅行、どうですか?」と問われた時、改めて自分自身の思いを整理することになった。
日本にいると、日常の動きがいかにスムーズで、いかに楽なものかを実感することは少ない。
移動も、買い物も、何の手間もなく、当たり前のように進んでいく。
しかし、海外に出るとその当たり前が揺らぐ。
今回は、マレーシアを訪れる前にシンガポールにも立ち寄ったが、そこでも言語や文化の違いを前に、事前の準備が重要なことを痛感した。
一つの場所にたどり着くためには、徹底的に調べ、計画を練らねばならない。
食事をするにも、物を買うにも、道を尋ねるにも、全てが英語でのやりとりだ。
日本では無意識にこなしていた行動が、ここでは一つ一つが挑戦となる。
その苦労の先にあるものは、予想を超える発見や感動だ。 自分が見たかったもの、触れたかったもの、それらが現実となって目の前に現れる瞬間、その喜びはひとしおだった。
シンガポールでの経験もまた、私にとって大きな学びと感動を与えてくれた。
異国の地で、準備と苦労を経て目にした景色は、日本での日常の便利さに対する感謝と、新たな視点を与えてくれたのだ。
さて、シンガポールでも色々な洗練を受けている。
そして、その一つが英語だ。
お金の両替や電車の乗り方、チケットの購入方法など、現地の人達に全部英語で聞くようにしている。
例えば、地下鉄に乗る際の「easy linkカード」(日本でいうスイカのようなもの)へのチャージ方法なんかは、聞かないとまったくわからなかった。
あとマクドナルドのタッチパネルの注文の仕方など全て英語表記なので、わからないと店員さんに聞くようにした。
しかし、初日の空港から普通の英語で聞けると思っていたのに、驚いたのは相手の言っていることがほとんど聞き取れないという事態だった。
「どうしてだろう?」と思ったら、シンガポールの英語は「シングリッシュ」と呼ばれる独特のアクセントがあるらしい。
シンガポールには4つの公用語があり、その中には英語もあるけれど、主に中国語やマレー語、タミル語の影響を受けているため、どうしても聞き慣れた英語とは違っていた。
例えば、”Japanese”という単語も「ジャパニーズ」と聞こえるはずが、最終子音が極端に弱い、または発音されないので「ジャパニッ」といった具合。
Ticketなら「チケッ」、car parkならカッパッ。
あとthはtの発音でthreeは、treeと聞こえた。 何度も「I beg your pardon?」と聞き返す羽目になった。
さらに、自分でも薄々気づいていたのだが、どうやら歳のせいで耳が遠くなっていることも関係しているみたい(笑)。
ボソボソと話されると、日本語ですら聞き取りづらいのに、それがシングリッシュだともうお手上げ。
耳の問題とシングリッシュという二重の難題に直面しながらも、異国の親切さに触れつつ、言語の壁を超えた温かさを感じる経験となった。
守田 智司
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